10. 不可逆変化

前回まで理想気体の可逆変化について熱力学の第一法則がどのように利用できるかを考えてきました。

しかし可逆変化というのはあくまで理想的な状況であり、実際の系では必ず摩擦や放熱によるエネルギー損失が生じ不可逆変化となります。

そのため残念ながらそれらの損失についての情報がなければ仕事や熱量をもとめることはできません。ただしいくつかの変化については熱力学的な計算だけでそれらの損失を求められる場合があります。

代表的な例は不可逆断熱変化気体の断熱混合です。今回はこれらをテーマに学んでいきましょう。

不可逆断熱変化

実在の系では断熱を厳密に行い外部と系内の熱のやりとりを0にしたとしても、系の中で容器と気体の摩擦により生じた熱が気体に与えられるため、理想的な可逆断熱変化と仕事や内部エネルギーの変化量が異なってきます。それでは可逆変化での仕事と不可逆変化での仕事の差を計算していきましょう。

とおくと、それらの仕事の差は

と求めることができました。

摩擦熱により気体が暖められることからとなるため、不可逆変化の仕事量は可逆変化より少なくなり、その分内部エネルギーが上昇します。

上記の⊿Wが摩擦による仕事に相当するため、実際の温度と可逆変化における温度から計算することができます。また可逆変化の仕事に対する実際の仕事の比η(イータ)を断熱効率と呼びます。割り算をすればすぐに求めることができます。

この比が1に近いほど、理想的な状態に近いということですね。また不可逆断熱変化はポリトロープ変化に近似することも可能です。

前回の例で取り上げたように状態量の実測値からポリトロープ指数を求め、これを使って計算することができます。

このとき圧縮変化ではn>γ、膨張変化ではn<γとなります。ここでもポリトロープ変化の汎用性がわかりますね。それでは断熱混合の方へといきます。

気体の断熱混合

気体の混合操作も代表的な不可逆変化です。

「混合気体の状態量は各成分の状態量の和となる」というダルトンの法則を用いて混合後の状態量を計算することができます。

図のように異なる種類・異なる温度・圧力・体積の気体が仕切りで分けられている状態から、仕切りを外して気体を混合させるとします。

混合前の内部エネルギーの和はサメーションを使って表すと

となりますね。また「混合気体の状態量は各成分の状態量の和となる」というダルトンの法則を利用すると、混合後の内部エネルギーの和は

とかけます。外部との熱の交換がなく、仕事もしなければ内部エネルギーの変化はゼロであるため、混合の前後で各気体の内部エネルギーの和は等しく、

これより

となりますよね。温度の次は圧力を求めていきましょう。

混合後の圧力はダルトンの法則より各気体の分圧の和になります。

というようになります。以上が閉鎖系の気体の混合に関する計算でした。開放系の場合はエンタルピー変化をゼロとして同様の計算をすることができます。理想的な状態違い計算はややこしくなりますが、そのぶん実用的なものですので、しっかりマスターしてください!