9. 理想気体の可逆変化(ポリトロープ変化)

今回は今まで学んだ状態変化を一般化したポリトロープ変化というのを学びます。今まではある1つの状態量を一定とする、あるいは熱量の変化を0として考えてきました。

しかし実際の熱機関では熱量のやりとりや温度変化がゼロということはあまりありません。そのためPV=一定PVγ=一定といった状態変化の中間的な、いろいろな状態に適用できる形を考えます(ポリトロープとは多方向の意味で、PV曲線の傾きを様々な方向にとることに由来します)。

断熱変化の関係式PVγ=一定における指数を比熱比γではなくより一般化してnで表すと

PVn=一定

となります。これがポリトロープ変化の式です。

nはポリトロープ指数と呼ばれ、nの値を0から∞まで変化させると、あらゆる方向のPV曲線を描くことができます。

上式において

n=0のとき P=一定    等圧変化

n=1のとき PV=一定    等温変化

n=γのとき PVγ=一定    断熱変化

n=∞のとき  PV∞=一定より

                   V=一定    等積変化

となり、様々な状態変化がポリトロープ変化で表せることがわかります。それではこのポリトロープ変化の仕事や熱量はどうなるのか計算していきましょう!

まずはポリトロープ変化における仕事量を計算していきます。

です。

ここで

となります。この式をさらに変形することもできます。

状態方程式を使うと、

と表すことができます。

さらに、Rと、Cγ、γの関係から

R= CV(γ-1)

と表せるので、これを用いると、

と、温度で表すことができました。

この、圧力と体積の式と、温度の式は非常に汎用性が高い式なので、覚えておいてください。

続いて、熱量Qを求めていきましょう。

先ほど求めた温度を用いた仕事量を使うと簡単に求めることができます。

となります。

このCnはポリトロープ比熱と呼ばれますが、通常の比熱と異なりゼロや負の値も取ります。

Cnの分子をみればわかるように、ポリトロープ指数nと比熱比γの大小関係が

n>γのとき   Cn>0

n=γのとき Cn=0 (断熱変化)

n<γのとき   Cn<0

となり、ポリトロープ指数の大きさによって熱量の符号が変わってくるわけです。

このように少し複雑なポリトロープ変化ですが、等温・断熱など理想的な状態変化ではない中間的な変化を表すことができるので、コンプレッサーやポンプをはじめとした実際の機械における圧縮・膨張等の計算に用いられます。

ポリトロープ指数はそれぞれの系によって異なり、気体の種類や扱う圧力域によっても変化するため、状態量の実測値をにあてはめて実験的に求めます。それでは例題をやってみましょう。

(例1)100kPa、25℃の空気1m3を2MPa、0.1m3まで圧縮する場合

より

100×103×1n=2×106×0.1n

0.1n=0.05

n=-log0.05≈1.3

となります。

空気の比熱比をγ=1.4とするとn-γ<0となるためCn<0です。
圧縮操作ではT2≥T1なのでT2≥T1≥0ですから

熱量Q=mCn(T2-T1)<0

つまりこの操作は吸熱であることがわかります。

(例2)100kPa、25℃の空気1m3を1MPaに圧縮したとき温度が300℃になった場合

一般的に示強性の状態量である温度と圧力を測定することが多いので、例1より実践的です。

まず

となります。次にボイルシャルルの法則を使います。

よって5.2n=10

nlog5.2=1

n≈1.4

これは空気の比熱比とほぼ等しいので断熱的に変化したことがわかります。

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次回は10. 不可逆変化