電気自動車(EV)は本当にエコなのか?

最近は海外(特にヨーロッパ)でガソリン車をEVに変えようとする法律ができています。ヨーロッパの都市部、あるいは中国では自動車の排気ガスによる大気汚染が社会問題になっています。EVの普及が大気汚染に対する一つの解決策になることは間違いないでしょう。

だからと言ってEVがエコであると結論づけるのは間違いです。「EVはエコ」という言葉はかなり曖昧なので次の3つの論点を考えなくてはなりません。ぼやっとした話題でも分割することができれば、議論することができます。

  1. SOx、NOxによる大気汚染の問題
  2. 国、地域における電力生産方法の違い
  3. 車の生産工程から廃車までの二酸化炭素の総排出量

この三つの論点から、「日本はEVを普及させるメリットはあるのか?」を考えていきたいと思います。

1. SOx、NOxによる大気汚染の問題

ヨーロッパや中国の都市部では自動車の排気ガスによる大気汚染が環境問題となっています。中国では工場の排出する化学物質の影響が大きすぎてあまり議題には上がりませんが。ロンドンやフランクフルトに行ったことがあるでしょうか?

ヨーロッパは街並みが綺麗というイメージがあるかもしれませんが、ロンドンやフランクフルトの空気の綺麗は東京よりもだいぶ汚いです。しかし、東京は世界的に大都市であることは間違いないし、車の交通量がロンドンより圧倒的に少ない、というデータはありません。

なぜ、ロンドンの空気は東京より汚いのでしょうか?

答えは簡単です。日本車は排気ガスの処理能力が高く、排気に含まれるSOx、NOxの量が圧倒的に少ないからです。

この排気を処理する能力の違いがあるので、東京はヨーロッパより空気が綺麗なんです。

それなら、ヨーロッパに蔓延する大気汚染問題を解決するのは簡単です。日本車に乗るか、排気ガス処理の技術を買えばいいのです。しかし、ヨーロッパを陣取っている自動車大国ドイツは、自国の産業を不利にするようなことをしないでしょう。

しかし、大気汚染問題は解決しなければなりません。ヨーロッパは海外の常套手段である「ルールを変える」という選択をしました。ガソリン車で勝てないなら、電気自動車で勝負しようということです。

つまり、SOx、NOxの大気汚染問題を解決しようという努力をしながらも、自国産業の保護を図っているわけですね。

巧妙な作戦です。こと日本においては、そもそも大気汚染問題はすでに克服しており、問題になっていないので、EVを普及させる理由にはなりません。

2. 国、地域における電力生産方法の違い

国、地域によって置かれている状況は異なりますので、「海外がこうだから」といって日本でもそうすれば得するわけではありません。

EV先進国の例として北欧のノルウェーを考えてみましょう。

ノルウェーはすでに新車販売の4割が電気自動車(EV)です。しかし、ノルウェーには2つの特殊な事情があり、EVが売れます。

まず一つ目は、充電インフラがあることです。ノルウェーは寒さが厳しいので、車のエンジンオイルが固まってしまいます。固まるのを防ぐために、駐車場には電源があり、電源からヒーターを車に繋げます。

この電源をそのままEVの充電に流用出来るわけです。

なので充電スポットなどを設置するコストがなく、今の環境のまま電気自動車に乗り換えることが可能なのが一つの理由です。

二つ目は、ノルウェーは国内電力の9割以上を水力発電でまかなっています。電気代も日本に比べて非常に安いです。自国で安く電気を作ることができるので、電気自動車のコストパフォーマンスも良いわけですね。

日本の場合はどうでしょうか?日本には充電インフラはないこともないですが、普及するにはまだまだでしょう。家庭の駐車場に電源を引くコストも必要です。

そして、日本は電気のほとんどを火力発電でまかなっています。火力発電は石油や天然ガスを燃やして電気を作るので、発電するときにCO2が排出されます。

ガソリン車はそのままガソリンを燃やして推進力を得ます。このときCO2が排出されます。

EVは電気を推進力に変換します。このときCO2は排出されません。

しかし、電気を作る段階でCO2を排出するのですから、日本においては、電気を使う→CO2を排出ということになります。EV自体は排出しなくても、トータルで考えるとCO2を排出しているのと同じことです。

当然のことながら、国が違えば置かれている状況は異なりますので、海外に合わせればいいということではありません。

3. 車の生産工程から廃車までの二酸化炭素の総排出量

自動車のCO2の排出量を考えるときに、走行中だけの排出量を考えるのは片手落ちの議論です。

CO2の排出量を考えるなら、走行中だけではなく、製造から廃車までの総排出量を考えるべきでしょう。この総排出量を調査した大学があります。マサチューセッツ工科大学のトランシク・ラボの調査結果によると、

米国の中西部でテスラのセダン「モデルS P100D(EV)」に乗った場合、ライフサイクル全体で排出されるCO2排出量を走行1km当たりに換算すると226g。独BMWのエンジンを搭載する高級大型車「7シリーズ」は同385g。三菱の小型車「ミラージュ」だと192g。

つまり一台の車の製造から廃車までのライフサイクルを考えるとき、EVのCO2排出量は少ないわけではありません。BMWの大型車よりは少ないですが、最も少ないのは三菱の小型車であるという結果が得られました。

ちなみにこれは27万キロ走行して廃車にしたときのデータです。ちなみに、走行時の排出量でさえも、ミラージュの方がモデルSよりCO2排出量が少ないです。

もちろん、これはアメリカの中西部で27万キロ走ったという仮定なので、日本で走るとどのような結果が得られるかはわかりませんが、それでもミラージュの方が総排出量が少ない可能性が断然に高いと思います。もし日本の電力を全て原子力発電でまかなうなら別ですが。

以上の話から、「EVのCO2排出量が少ない」とは判断できません。よって、地球温暖化防止のためにEVに乗ろうより、地球温暖化防止するにはミラージュに乗った方がいいようなこともありえます。

以上、三つの観点から、今まで持っていたEVに対するぼやっとしたイメージが崩れ去ったことでしょう。しかし、世界の潮流はEVの方向に流れて行くのは間違いありませんから、日本の自動車産業はこれからどうなっていくのか考えてみましょう。

4. 今後の展望として

実は日本はEVの先進国ではありませんが、電気自動車を生産する技術はすでに持っています。トヨタの「プリウス」などハイブリッドエンジンですよね?ここから内燃機関を取っ払ってしまえば、電気自動車にすることが可能です。(もちろんそこまで簡単な話ではありません。)

電気自動車にマーケットが移っても、日本メーカーは負けないと思ってます。

EVを生産する上で最も重要なのが、電池です。現在テスラモーターズの車にはパナソニックの電池が使われています。ここでも日系メーカーが活躍しています。他にもTDKなどが全個体電池を開発しています。日本は材料化学分野では世界トップクラスですから、電池のエネルギー密度も日本メーカーがこれから向上させていくことでしょう。

また、自動車でいえば、自動運転車も話題に上がることが多いです。高速道路を自走させるくらいではなく、完全自動運転を実現するのはおそらくGoogleなどの画像認識が得意な会社であると思ってます。完全自動運転はまだまだこれからの話ですので、ゆっくり技術の進歩を見守っていきたいです。

追記

車の賢さがどんどん上がっている時代ですから、いま新車を買うのはなんかもったいない気がする。